キッチン
「キッチン」。吉本ばななさんの短編小説だ。
最近再読した住野よるさんの「また、同じ夢を見ていた」と同じで、
今の自分の心情と似ている、今の自分に必要な本を引き寄せているような気がする。
とても孤独で暗い感情を知ってしまった、いや、運命的にそうなってしまった。
はたまたそうでもない。自分の意志でも選ぶ事ができない決まった道を歩く、そんな男女の物語だ。(私の拙い言葉では現状伝わらないと思うのでこの辺で。。)
今朝の出来事。通勤電車の中で"キッチン"を読んでいた。私は本を読むと、その本の世界観に入り込んで気持ちが持っていかれる、なんてこともしばしばある。今日もその1日だった。
電車を降りた後、初めてか久しぶりかの感覚に襲われた。駅で聞くことができる、電車のアナウンス、また違う路線の電車のアナウンス、電車の扉が閉まる時の音、発車ベルの音、コンビニのレジの音、たくさんの人が行き交う足音、、、。そんな多くの音が聞こえてきて、次第にこの場に取り残されたような感覚になってしまった。映像シーンでたまに見る、視界が左右にぼやけて揺れているそのものだった。また、一度にこんな音が聞こえることがあるのかと自分でも驚いた。
そんなこんながあり、心許ない状況のまま1日を終えようとしていた。
帰り道、私はなにかいつもと違うことをしたいと思い、目当ての飲食店が空いていなかったので、一人暮らしをしているこの街で夜の散歩をすることにした。夜と言っても、19時前後の時間帯であるが。
いつも使用する逆側の口のそこは、思っていたよりも暗かった。緊急事態宣言中だからというのもあるだろう。ただ、素敵な風景を見つけることが出来た。
一つ目は、漫画が読める恐らくチェーンのこじんまりとした喫茶店。客は1人しかいないようだったが(祝日明けの平日というのもあるだろう)、暗いそこで輝くように建っていた。是非次は入ってみたい。
2つ目は、焼き鳥屋さんだ。テイクアウトが出来るよう、かつ目立つよう(?)、外で煙を立てて焼いていた。そこの焼き鳥屋は地元の温かい様子が経営している夫婦から滲み出ており、通りすぎるだけでも十分すぎるほど伝わってきた。またその煙の匂いは夏祭りを感じさせるもので、なんだかこの少し肌寒い日には不思議な感覚が私の中に残った。
夜ご飯は外で食べ、そんなこんなで家に帰った。すごく些細な事ではあるが、いつもと違う行動をしたため、ぼーっとしてしまう夢のような感覚だった。私は夜が好きではないが、今日ばかりはこの暗い夜が心地良く感じた。
私も"キッチン"の登場人物のように、答えを発見したい。